2019.08.27

NORIEI Director Interview

8/29(木)から開催されるNORIEI Pop Up Shop at EEL Products Nakameguroに先駆け、前回のイベント時にディレクターの高梨氏にインタビューをさせてもらいました。作り手のこだわりや、一足の革靴ができるまでの並ならぬ想い、今後の展望など、熱いお話をして頂き、普段ではお伺いできない大変貴重な内容となっております。NORIEIファンの方はもちろん、革靴好きの方や、ものづくりについて関心がある方など、多くの方に一読して頂ければ幸いです。
IMG_2119

まずNORIEIとはどういったブランドですか?

ブランドの根底にあるのが靴は歩行するための道具ということ。

ブランドとしては9年ですね。NORIEIの靴っていうのは店頭に並んでいる状態や、お客様の手に渡る時点では完成ではないのです。ものとしてブランドの根底にあるのが靴は歩行するための道具っていうことが一番核にあります。ファッションというものは切るに切れないもので、もちろんスタイリングがあってこの靴を選ぶという場合もあるんですけど、洋服だと着崩すという言葉はあっても靴は履き崩すということはないわけですよ。靴紐を緩めながら履いたりしないじゃないですか。履けないことはないけど、履き心地が良く歩き易いわけではないですよね。要は革靴の魅力とは何かにリンクしていくのですが、この新品だと70%か80%の状態。70%の完成度だったのが、80、90、もしかしたら100%になったというような物に、履いてく人に寄り添っていくというか、変化していくような物になるんです。やっぱり道具は使っていくとどんどん馴染んでいって、エイジングとともにケアしてあげて、どうしても修理が必要になれば、道具を修理、パーツを替えることと一緒のようにソールを替えたりて長く付き合っていくものにはなるんで、決して安い価格帯ではないと思うんですけど、道具として考えると、やっぱりそこから履いていく回数で考えていくと、使い方によってはね、買うタイミングにもよりますけど一生物じゃないけど、そういうふうに大事に履ける靴だとは思っています
お客様に販売してお渡しすることがゴールではないということですが、アフターケアなども含め具体的にはどのようなことをされているんですか?

靴を作った人の手に戻って修理されて、また履いてもらう方の足に渡る。

まず自社工場で靴を作っている人間が実際修理も行っていますし、もちろん純正パーツを使います。靴というのは履く方によって履き癖っていうのがやっぱりあったりするので、それに対して必要な修理があれば細くできますし、アドバイスであったりとかそういったものができるっていうのがひとつです。まず修理するときって木型に入れるんですよ。この木型っていうのがNORIEI専用の物で流通しているものじゃないんで。靴に合ってない木型を入れちゃうと、特にコードヴァンの場合ちょっと変な癖がついてしまったりとか、お客様自身もそうなんですけどシューツリーを合ってないものを入れると、ボコって張り出してしまったりとかっていうのもあるんで、そのへんの不安はなくできるかなとは思います。

たしかに作ってくれている方に直接お直してもらうってインポートブランドじゃなかなかないですよね。

基本的にはないじゃないですか。まずそもそも靴の製造っていうのが分業っていうのが基本なんです。メーカーによっては革の裁断から組み立てまでの工程が業者ごとで分かれていることもあったりするんですが、NORIEIに関しては全部自社で裁断から縫製、組み立てまで全て行ってます。ようは靴を作った人の手に戻って修理されて、また履いてもらう方の足に渡るっていう流れがあるので、直接お客様が工場に持って行って作った職人に渡したりするってことはないんですけど、その近さや安心感は感じられるのかなあ思います。
IMG_2074

そもそもなぜ素上げのコードヴァンを靴に使用しようと思ったんですか?

いろんな意味でこれがNORIEIの哲学であったりとか、真の部分が表現されているのです。

コードヴァンっていうのは元々NORIEIの工場とタンナーさんは付き合いがあって、通常のコードヴァンは使ってたんです。そんな中、革工場に行くと仕上げをしていないグレージングっていう磨き上げの加工をしていない、着色をしていない素材っていうのが工場にあって、これをそのまま靴にしてしまったら面白いんじゃないかって思ったんです。そういうものって世の中にないんで、まずサンプルとして作ってみようというのがはじまりですね。今はもう本当にNORIEIっていえばこの素上げのコードヴァンが一番代名詞的なんですけど、もちろんNORIEIとしては靴のブランドなんで、マテリアルだけを売ってるわけじゃなく、コードヴァンに限らず様々な革の靴を作っています。コードヴァンって繊維質が縦で、吊り込みの時に裂けやすい反面、癖付けしにくいし、実はすごく技術のいるごまかしのきかない素材なんですよ。フラッグシップモデルであるDERBYはすごくプレーンなもので、一見変哲のないデザインなんですけど、デザインが少ないからごまかしが効かない、作りとして、素材としてのごまかしが効かない。そして長く履いていった時にどれだけ耐久性があって、変化して足に馴染むか、いろんな意味でこれがNORIEIの哲学であったりとか、真の部分が表現されているのです。
IMG_2088

高梨さんが考える革靴の魅力って何ですか?

歩行してはじめて靴の道具としての良さっていうのが現れる。

一番はやっぱり気持ち良い靴。ブランドを立ち上げた理由が気持ちいい靴、言葉はあまりピンとこないというか、こういう硬そうな靴で気持ちいいって相反しそうなんですけど、気持ちいい、心地いい靴を作りたいっていうのがベースにあります。それは足入れた瞬間に感じることでもあるんですけど、歩行してはじめて靴の道具としての良さっていうのが現れるので、その時に長く履いて快適か気持ちいいかっていうところで、やっぱり天然の素材を使っているので、通気性が良かったりとか、蒸れないとか歩きやすいっていう要素が、革靴全てに言えることじゃないんですけど、革靴だからこそできる表現。スニーカーだと基本的にはソールは樹脂で、アッパーに関してはコーティングされてる素材のものが多いので実は蒸れやすいんですよ。
IMG_2077

スニーカーと違って革靴は綺麗にお手入れしてソールさえ替えれば一生履けるっていうのはたしかに。

どっちがいい悪いっていいうものではないと思うんですよ。それぞれに魅力はあるんで。だけどもしかしたら今回も接客した中で、”革靴履いたことないんです”っていう方がいらしゃったんですけど、いつもその時にお伝えするのが、革靴だと硬い、歩きづらい。例えば革ジャンとかもそうですけど、革自体にあたたかみがある、逆にいったら通気性も良かったりとか、ナイロン物のアウターであったら蒸れてしまう。ゴアテックスだったらその湿気を逃していろんな科学の力で使えるものはあるんですけど、ただ天然のものでもより革のエキスパートというか、そういう人間がいて、適している素材を選んで靴を作ってるというのがNORIEIなんです。話がそれちゃったんですけど、革靴を履いたことがない方には革靴の良さっていうところ、あと理由っていうのはお伝えしながら、スニーカーとの違いっていうところを知ってもらって、じゃあちょっと一回履いてみようかなっていう。やっぱりネガティブなイメージを持ってる方も多いんで、夏場暑いとか。

たしかに、夏場のイメージはあまりないですよね。

たとえばサンダルと比べたら暑いと思います。だけど、革自体が呼吸ができるし、夏場は通気性がいいので個人的にはスニーカーより涼しいです。ただ夏場って正直何してても暑いじゃないですか。だから涼しくなるわけじゃないですけど、キャンバスですごく通気性良さそうだなっていうスニーカーでも、実は裏がコーティングされているんで蒸れやすかったりとか、インソールもアウトソールも天然じゃないゴムだったりするんで、通気性も悪く、蒸れて臭いの原因になります。逆に革で作られているものだと、もちろん汗はかきますし、コップ1杯分はかくと言われている汗をどう逃していくかっていうのが考えられて作られているので。

じゃあ足自体にはすごく健康的っていうことですね。

そうですね。別にコンフォートシューズとか健康シューズをうたってるわけではないんですけど、その中でどう足に馴染んでいくか、どう快適に履けるかっていうところがうちの考えている靴になります。ライニングには馬革を使っています。柔らかく、吸湿性、通気性が良いのが特徴で、これがライニングとして使われているんで、足当たりが良くて柔らかくて、汗を吸ってくれて外に出すっていうとても機能的なんですよ。グットイヤーウェルトの靴は足のよく馴染むと言われていますよね。それは中底とアウトソールの間の隙間に敷き詰めたコルクが使用の過程で中底とともに沈んでいくからなのです。生産効率を上げようと思ったら、詰め物をシート状になっている状態で、ぽんっと入れてしまって縫っちゃえば早いですよね。だけどシート状のものは小さめだったり薄かったりするので、クッション性が少なかったりします。NORIEIでは一足毎に練りコルクを手作業で適量を敷き詰めていくことによって、クッション性が良く、時間をかけて沈んでいきます。安価な靴とかだと中底も革のクズとかを固めてシートにしてるようなものを入れたりするんですね。そうするとやっぱり通気性悪かったり変化もしにくかったりするんで、足馴染みが悪かったりするんですけど、天然のものをしっかり使うことによって履いていくと指の形に沈んでいって。オールソールのタイミングでだいたい開けるとコルクがへたってるんで、うちでは一回はずしてコルクをもう一回しき直す作業もします。なので足入れしたときに実際ちょっとタイトに戻るんですよ。アッパーは馴染んだ状態ですけど、ソールは新品、足入れしたらなんか新鮮な感覚になってまた履いていくのが僕らの流れです。
IMG_2134

コルク入れ替えてもらえるって、だいぶ珍しいですね。普通のお直し業者とかってやってないですよね。

やらないとこが多いんじゃないですか。もしかしたら別料金かもしれないですし、でもまあ、うちも中開けて必要なものがあれば見積もりさせてもらって修理を行うんですけど。例えばこのウェルトも革なのでもしかしたらへたってく可能性あるんで、何度も何度もできないんですけどリウェルトっていうウェルトの巻き直しとかもやったりとかもしてます。

えー、それすごいですね。そこまでリペアしてくれるなんてきいたことないですよ。

これ僕のやつで、だいぶ履いてるんですけど、アッパーに対したら中底きれいじゃないですか?実は一回中底も替えてるんですよ。汗って塩分も含むので、その塩分とこのタンニンなめしも革って相性悪くて、塩分吸うとちょっとひび割れしてきたりして、僕履いてると結構表面ガサガサになって割れてきたんですよ。オールソールのタイミングで上の部分だけガバって取って、もう一回吊り込み直してアッパー以外全部新品の状態に戻したんです。それは状況によってできるかできないかなんですけど、可能な限りそういうこともやります。
IMG_3835

失礼かもしれないですけど、革靴ってどちらかというとドメスティックよりインポート物の方が国内でもメジャーな気がします。何か大きな違いがあるんですか?

全て集約してるのがバランスなんだなって思います。

歴史ですね。要は欧米で言ったら革靴を履く文化ていうのはもう何百年と。本来元々テーラーがいてスーツがあって革靴履いて外行く時には帽子被ってって文化があって、それがどんどん崩れていって、カジュアルってものが落とし込まれていって。今でこそシャツなんてシャツ1枚で着るけど、本来で言ったらインナーとして、シャツの袖はっていうとジャケットの袖が汚れないようにとか、本来そういうルールだけど今はそうじゃないじゃないですか。日本での履物の文化なんて、草履とか下駄とかそういうもので。そういう中でファクトリーとしての歴史は54年とかになるんですけど、54年ってなかなかの歴史だと思うんです。でも海外だとその何倍も歴史があるんです。だからその文化ですよね、そのファッションっていう文化がそもそも歴史が違うんで。決して技術的に低いということはないと思いますよ。日本人は靴に限らずきめの細かさだったりとか。靴って両足で一足なんです。靴としては左右のバランス感が悪かったらダメなんですよね。代表は靴に対する美的感覚をすごく持ってるんですよ。美しいとか綺麗とかっていう。無骨な感じの容姿なんですけど。そこの拘りには結局細かな積み重ねで、0.1mmのこだわりを積み重ねたことによって、出来上がった物のバランスが美しいかどうかっていうのは、もしかしたら気付かない人もいるだろうし、それでいいっていう人はそれでいいし、それが美しいって言ってるのも正しいかどうかも本来わからないんですけど、だけどその積み重ねでこれって成り立ってるって考えた時にそれを全て集約してるのがバランスなんだなって思います。

NOROEIの今後はどのように考えていますか?

どこにあってもNORIEIでありたいんです。

靴のブランドって国内のブランドでも一時的な人気が出てもどうしても継続するのが難しんですよ。どうしてもデザインの方が先行して作っているブランドが多いので。逆に僕らみたいなファクトリーブランドはあまり多くないんです。例えば海外のブランドで、大手セレクトさん、地方の小売店さん、百貨店さん、様々なお店にあったりしますよね。ドメスティックのブランドだとアメカジの強いお店に置いてあると、あーそっち系ね、モードに強いお店に置いてあるとあーそっち系ね、ってなるんですけど、そうではない海外のブランドはどこにあってもそのブランドですよね。どんなお店、どんなスタイリングに合わせても変わらないんですよ。やっぱりそれってブランドの歴史や背景からなんです。だからNORIEIもどこにあってもNORIEIでありたいんです。だから将来的には洋服屋さんだけでなく、地方にある町の靴屋さんにもあるような様々なジャンルのお店にあるのが理想ですね。
 
NORIEI Pop Up Shop at EEL Products Nakameguro

この度、GWに大変ご好評いただきましたノリエイオーダーフェアを今シーズンも開催致します。
普段取り扱いのないモデルのサンプルをご用意して、木型、素材、ソールなどのパターンオーダーによる受注会と、一部モデルの即売会となります。
また会期中はNORIEIディレクター高梨氏に在廊して頂きます
世界で自分だけの一足を手にできる絶好な機会となりまので、ぜひお越しくださいませ。

 

【日時】
8/29(木)〜9/1(日)
平日Open 14時 土日
Open 13時 Close20時
【場所】
EEL Products Nakameguro
東京都目黒区東山1-8-6 2F
03-6303-0284
【価格、納期】
¥66,000〜,3ヶ月後の予定
NORIEI(https://noriei.jp/)
自分たちのファクトリーにて一貫した姿勢で靴を作り続けるシューズブランド、NORIEI。 コードバンに代表される、姫路の地にて生産される皮革を素材に、靴の本質を見つめ、 遊び心や、挑戦心を合わせ持った靴づくりをしています。